同じ音
公演が終わると必ず散髪に行くことにしている。ボクがいつも行く散髪屋さんは、おばあちゃんが1人でやっていて、このおばあちゃんに公演のことを報告しながら髪を切ってもらうのが習慣になっているのだ。
おばあちゃんはいつもニコニコしながらボクの話を聞いてくれる。その笑顔が嬉しくてボクも「本番中に失敗した話」とか、笑える話を選んで話すようにしている。
今回も髪を切ってもらいながら話していたら、不意におばあちゃんの表情が暗くなった。で、「あのときと同じ音だわ・・・」とおばあちゃんがポツリと言った。
鏡の前に置かれていたテレビからは、ちょうどイラクが空襲にあっているニュースが流れていた。
ボクが、一体何のことだかわからなくてとまどっていると、「今、イラクが空襲にあっているニュースをやってたでしょう、私が小学1年生の時、空襲の時に鳴った警報と同じ音がしたの・・・」と、おばあちゃんは寂しそうに言った。
なんか、ものすごく切なくなった。